ヤングケアラーは居場所、若者ケアラーは経済支援が優先課題 オンラインイベントレポート (よしてよせての会)

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ヤングケアラーがいる現役高校生からメッセージが届き企画始動

2022年8月5日によしてよせての会のメンバーとヤングケアラーオンラインイベントを開催。

テーマは「ヤングケアラーの友達がいる高校生や若者ケアラーの悩みや支援のあり方」についてでした。

ある日、10代男性の高校生翔太(仮名)さんから「よしてよせての会」宛にメッセージが届きました。

よしてよせての会とは、新聞・雑誌・ウェブなど多数でケアラー問題を取材・評論し自らも当事者の奥村シンゴが立ち上げた支援団体です。介護政策提案、就業支援、レスパイト企画の3つを柱に運営しています。

翔太さんは、「友達のお母さんが病気で、家事を一人でしているので部活動や学校の定期試験もほとんど勉強しておらず、本人はケアをしている自覚がありません。どうしてあげたらいいか悩んでいました。」と私に相談しました。

翔太さんの友達は、母親が2年前、脳梗塞を罹患し数か月間入院とリハビリ生活を余儀なくされました。当時小学生の弟がいて一人で数か月間、家事、洗濯、掃除などをこなした「ヤングケアラー」でした。

「ヤングケアラー」とは、法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされ、全国に10万人いると推定されています。

「お母さんが病気しちゃって弟の世話をしないといけないので、すぐ家に帰らないといけないんだ。介護ね。今日は遊ぶ約束だったのにごめんね」(翔太さんの友達)

翔太さんの友達の母親は、その後体調が回復したものの学生生活の半年間を弟の世話に費やしました。このように、学生生活で家族のケアによって学業や部活に支障が生じる子がいます。

現に、昨年、厚生労働省が中学2年生と高校2年生に「ヤングケアラー」の実態調査を実施しました。その中で、大人に助けてほしい支援として「学校や受験勉強など学習サポート」と「自由に使える時間がほしい」が上位を占めています。

私は32歳から認知症祖母と精神疾患母親の多重介護を1人で計10年経験した「若者ケアラー」として何が力になれるのか考えさせられたエピソードでした。

今回、翔太さんに登場してもらいお話を聞きながら若年介護支援のあり方や接し方など多数の方から意見を聞きたいと思い企画しました。

参加者は、ヤングケアラーの友達がいる高校生、元ヤングケアラー、現若者ケアラー、市議会議員、家庭相談員、元介護職員、大学教授までさまざまな経歴をもった方々が幅広い視点で議論。

オンライン参加の方々のご意見・ご感想

田中恭太郎さん(ヤングケアラーの友達がいる現役高校生)

「友達が俺に悩みを話してくれヤングケアラーと気づきました。友達は、母親が脳梗塞、父親が単身赴任中の状況で体調が回復するまでの半年間、弟の世話をしていました。ケアの範囲は洗濯・家事・食事の用意と広範囲に及びます。それで、テストの成績が低下したと言っていました。ヤングケアラーは、家族などが介護状態に陥った時、たとえ短期間でも影響が大きく生じます。介護サービスをどう利用していいかなどわからない子が多いと思います。」

たくにーさん(現若者ケアラー)

「僕は若者ケアラーになり7年半が経過。兄弟が介護に非協力的、父親にDVをうけ助けをもとめられず、気がつけば30歳になりました。母の介護費用や光熱費などで生活費が底をつき、昼間は電気を消灯し風呂は残り湯を使い食器洗いは数日に一度の生活。若者ケアラーへの経済的・精神的支援がほとんどないのは疑問」

安井さん(元ヤングケアラー、現在兵庫県尼崎市のB型就労支援勤務)

「幼少期から両親のヤングケアラーを経験しました。ケアラー支援の意見と言うのも難しい限りです。 何が必要なのかもケアラー自身がわからないのが問題です。」

TOMOEさん(元ヤングケアラー、現在介護士で16年目)

「介護サービスは利用できたが、周りの大人に相談するのはハードルが高かった。ヤングケアラーは、介護・医療・福祉の知識や経験に長けた上で信頼関係を築ける人たちを求めているのではないか。」

中島淑恵さん(富山大学教授)

「認知症カフェやデイケア・デイサービスなどが新型コロナウイルスの感染対策の影響でつながりが分断されているところが多い。コロナの流行次第ではあるが、居酒屋のような介護者同士が気軽に集まれる場所が必要。」

末藤さん(元介護職員、現在療養中)

「私が勤務していた施設は、ヤングケアラーの情報のみ知り現状認識していない人が大半。まず、知ることが大切。今回、介護者(ヤングケアラー)本人にスポットが当たったのは大きな前進。今後は、学校・医療・教育・行政の縦割れ解消が課題。」

Ayaさん(沖縄県の家庭相談員6年目、元々児童虐待や発達障がいを担当)

「私が居住する沖縄は学校ー行政ー地域の連携が比較的しっかりしている。自治体によって格差があると思うが、学校・対人関係・介護・家族少しでも困ったり悩んだらいつでも行政に連絡してほしい。」

参加者の皆様から多様な意見を聞かせていただきましたが、ヤングケアラー・若者ケアラーの優先課題は、異なる印象をもちました。

まず、「ヤングケアラー」は、信頼できる大人がいて介護サービスや勉強などを教えたり、ありのままの自分を見せられる居場所の確保が必要ではないでしょうか。現在、「子ども食堂」、「各自治体・民間のオンライン(オフライン)イベント・コミュニティー」、「児童館」などがありますし、近年、「ヤングケアラーの居場所」は増加傾向にあります。

実際、文部科学省と厚生労働省が実施した「ヤングケアラー実態調査」で「世話を必要としている家族×学校や大人にしてもらいたいこと」として、「自由に使える時間がほしい」(16.2%)が最も高く、「自分のことについて話を聞いてほしい」(13.5%)、「勉強を教えてほしい」(12.2%)が続いています。お金の面の支援してほしい声は、複数人ケアラーで11.4%を除いては、2%~7%台と「若者ケアラー」や「30代以上の介護者」で最も低くなっています。

一方、「若者ケアラー」については、「居場所」に加え、経済的支援が不可欠といえます。なぜなら、年齢的に進学・就職・仕事・結婚・育児と人生のターニングポイントに親や祖父母などの介護が必要になるのと、今後の日本を支える人たちだからです。

文部科学省と厚生労働省が実施した「大学生ケアラーの実態調査」で「大学や周りの大人に助けとほしいことや必要としている支援は、「学費の支援・奨学金等」と「進路や就職など将来の相談にのってほしい」が28.3%と同率トップで、「家庭への経済的な支援」が23.4%と続きます。

私自身も若者ケアラー多重介護当事者も無駄な経験と思わないワケ

私は、32歳から認知症祖母と精神疾患など母の介護が同時並行でスタートした複数人介護若者ケアラー当事者です。介護当初は、「会社員が働く平日日中に祖母と散歩に行く姿を見られたくない」と劣等感やプライドがありました。

また、身内の借金や私自身が介護離職し無職期間が5年間も続いたため収入が途絶え貯金を切り崩す生活・・・。介護期間は10年に及び気がつけば42歳。

それでも、けっして無駄な10年間とは思っていません。介護しながら在宅ワークを開始し連載のオファーがスタートし株式会社法研様から「おばあちゃんは、ぼくが介護します。」を商業出版。「奥村さんの本を読んで同世代で仲間がいないと思っていました。急いで連絡しました」とケアラーなどから声をもらうのが一番うれしいです。

そして、ライターさん、編集者さん、記者さん、テレビマンさん、国会議員さんなどにお声がけいただき人脈も拡大。

まだまだ文章もしゃべりも下手な若輩者ですが、同世代や若い人たちの役に立ったり悩みを解決に近づくのが目標です。

今後のビジョンは3つあります。

「ケアラーとその家族が普通にご飯を食べれて寝れて仕事ができる社会実現」

「ケアラーと家族、ひきこもり、生きづらさを感じている方々が一同に集まれる居場所を作る」

「現居住地宝塚の特性を活かした地域貢献」の3つです。

今後も「よしてよせての会」でケアラーやその家族などの問題解決や息抜きができる斬新な企画を立ち上げていきます。ぜひ、お気軽に参加してくださいね。

文責 よしてよせての会代表 奥村シンゴ 

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